カイルシェフと出会いはSUSgalleryのタンブラーをご自身のお店で使用したいと見つけて頂いたところから。その後も約10年に渡りご愛用頂いています。長きに渡るお付き合いの中で、遂にカイルシェフがオーナーを務めるSingle Thread Farms〈 シングルスレッドファームス〉へインタビューに伺いました。
owner chefKyle Connaughton
1976年 カリフォルニア州ロサンゼルス出身
LAの老舗日本料理店などで修業後、日本に渡り、
ミシェル・ブラスシェフ氏の元を含む様々なレストランで修業
2006年 イギリスの「Fat Duck Experimental Kitchen」にヘッドシェフとして参加。
2016年 カリフォルニア州ソノマ地区に「Single Thread Farms」 をオープン
2019年 ミシュラン三ツ星を獲得。以後、毎年三ツ星を保持している。
最近は京都にSoNoMaをオープンするなど、
新たな挑戦を続けていらっしゃる印象があります。
本日はまず、シェフを志した経緯や、
Single Thread Farmsについてお聞かせください。
――まず、料理の世界に入るきっかけやインスピレーションは何でしたか。
私が料理人を志すようになった原点は、9歳の時の体験にあります。当時、父が仕事で日本を訪れ、その際に初めての寿司体験をさせてもらいました。カウンターに座り、日本料理について説明を受けながら、寿司職人が一貫一貫を丁寧に握る姿を間近で見たこと、自分が「これを食べたい」というものを選び、その場で味わう。 その一連の体験は、幼い私にとって強い印象を残しました。素材への向き合い方や料理が生み出す特別な時間。あの感動が「自分も料理を通して人に何かを届けたい」という思いへと変わり、自然と料理の道を志すようになったのです。
振り返れば、非常に長い道のりでした。ロサンゼルスで料理を学び、その後は長期間を日本で過ごし、さらにロンドンでも経験を積みました。様々な土地で料理と向き合いながらも「いつかはこの地、ソノマ郡ヒールズバーグの地に根を張りたい。」という思いを抱き続けていました。
同時に、私たちには明確な目標がありました。それは、レストランと農園が一体化した場所を営むことです。妻のカティナが農園を手がけ、私はそこで育った食材を使って料理をする。―その循環をかたちにするために生まれたのがSingle Thread Farmsでした。しかし、レストランをオープンするまでには、実に20年もの時間を要しました。試行錯誤の末にようやくこの場所が完成し、その後、ミシュランに評価していただくまでになりました。初年度に二つ星を、そして次の年には三つ星を獲得することができたのです。
――カイルシェフの料理におけるコンセプトや信念を教えてください。
ここにあるものはすべて、カティナの農園で育まれているものを起点にしています。「どんな料理を作るか」を先に決めて食材を探しに行くことはせず、カティナから「今、農園にある旬の野菜」を教えてもらうことが私たちのすべての指標になります。私たちは、農園から届くものに基づいてメニューを組み立てる。そのため、メニューは常に変化し、季節や時間と共に移ろい続けます。止まることはなく、常に生きているものなのです。
私たちがこの場所で行っているのは、農園の「今日」をそのまま伝えること。食材を通して、料理を通して、そこに添えられる物語や花に至るまで、ゲストがここで体験するすべては「今日」という物語なのです。
――先ほど、食材が入っているバスケットを見せてくれましたよね。
はい。畑で育った食材はすべて、その日の朝に収穫され、厨房へ届き、夜には料理として提供します。そして翌日も、また同じことを繰り返す。すべては常に変化しています。つまり、訪れる度に異なる体験ができます。常に同じメニューがあるわけではありませんし、以前お出しした料理に立ち返ることもありません。私たちは、常に新鮮さを保ち続けたいと考えています。すべてが一期一会であり、常に変化し続けているのです。
――特に大切にしている食材やメニューはありますか。
私たちにとって特別な食材を挙げるとすれば、唯一、一年を通して育てている葱ですね。年間を通じて収穫できる食材だからこそ、私たち自身も葱を使った料理には特別な思い入れがあります。葱の花をレストランのロゴにしているのにも、特別な理由があります。農園の中で、唯一変わらずに存在し続けているものだからです。私たちは葱を花が咲くまで育て、カティナが種を採り、また最初から育て直す。その循環を何度も何度も繰り返しています。そういう意味で葱は特別な存在です。
他にも届くのをいつも待ちわびている食材は沢山あります。中でも、品種が異なるトマトを収穫するのは一番楽しみなことかもしれませんね。トマトは30もの種類があるので。とても小さなものから大きなもの、少し風変わりな形をしたもの、堂々としたサイズのものまで、本当に多様です。とても風味豊かで彩りのよいトマトは夏の中盤で収穫できます。
――国内外のお客様と接するうえで意識していることはありますか。
そうですね。私たちのレストランには、実に多くの海外のお客様がいらっしゃいます。北米のさまざまな地域をはじめ、ヨーロッパ、アジア、南米まで世界中からお越しになります。勿論、味や香りの好みは一人ひとり異なります。ですが、私たちが大切にしているのは、「ここで何をして、なぜこの場所が特別なのか」をきちんとお伝えすることです。私たちは、カリフォルニア、ソノマ郡に根ざしたレストランでありたいと考えています。
日本から大きな影響を受けてはいますが、日本料理を再現しようとしているわけではありません。日本の農家の風習や料理の考え方、そして「おもてなし」に代表される精神性。そうした本質的な部分に着想を得て、それをカリフォルニアという土地に落とし込んでいます。ここには、本当に多様な価値観を持つ人々が集まります。だからこそ、この地域ならではのユニークな体験を、国籍や背景に関係なく、すべての方に同じように感じていただきたいと思っています。
この土地にはフランスや日本、中国、イタリアのような長い料理の歴史があるわけではありません。そういう意味では、まだ若い地域です。だからこそ、固定概念や期待がなく、私たち自身の表現でお客様に新しい印象を届けることができるのだと思います。料理において、フランス料理や日本料理から着想を得ることもありますし、この地域はメキシコとも深く結びついていますので、その影響も自然と受けています。本当に多様な文化が交差する土地ですね。
photo: Kim Carroll / Garrett Rowland
- address
- 131 North Street Healdsburg,
California 95448, USA - tel
- +1 (707) 723-4646































